祠稀は通りがけに僕の顔をちらりと見遣ってから、ドアの向こうへ消えた。
途端に静かになった部屋で僕がすることといえば、空になった弁当箱を片付けることだった。袋にまとめたそれをカウンターの方へ持って行く。
やっぱりゴミ箱はないのか……生活感も全くないし、当たり前と言えばそうなんだけど。
台所というよりも給湯設備のような場所をざっと見渡してから、カウンターにゴミ袋を置いた。
そのあとソファーに座った手持無沙汰な僕は、行ったことのない上階を散策してみることにした。
けれど懐中電灯など持っていない状態で真っ暗な場所を散策する気にもなれず、辿り着いたのは屋上だった。
「うわー……」
遠くまで拡がる色とりどりの明かりや、広大な夜空に散りばめられた群星を前にしても、僕はしょぼい景色に気落ちした声を出す。
5階建てだもんな。せめて15階建てくらいあれば、見下ろせる建物も多かったろうに。
見下ろしたところで、このビルの周りは廃れているから楽しくもないだろうけどさ。
屋上の出入り口から離れ、フェンスのほうへ向かう。
異常なほど明るい歓楽街の表あたりを眺めていたせいか、すぐ近くにあった異常に気付いたのは、フェンスに手をかける直前だった。



