けらけらと笑うクロの相手をしたくないのか、祠稀は出窓に向かっていく。
祠稀は情報屋……だったって、こと?
『クロ』という名前が単なるあだ名なのか、情報屋だけに付けられる通り名なのか、わからない。
「いいねえ、パーカーちゃん。その、なーんにも知らなくて考え込む顔」
座ったままのクロは自身の両膝に頬杖をつき、微笑みを浮かべながら僕をじっと見つめてくる。
「でもそれは、愚かだよ。恰好の餌食。相手の思うつぼ。ウスバカゲロウ、蟻地獄。吸い取られるだけ吸い取られて、脱け殻になったらぽーいっと簡単に捨てられちゃうんだよ」
「……」
「うんうん。その顔は、多少なりとも経験があるね。怖くてたまらないのに懲りずにここにいるなんて、パーカーちゃんはすごーく素直なんだね? でもそれも、ブッブー! アウトです!」
「てめえはホンットうるせえな! はよ帰れっての!」
「メモ、メモ。しぃ君は繊細さと配慮が足りないとクロは思うのです」
「ねー?」とクロは首を傾げて同意を求めてくるが、頷けなかった。
「クロ……そ、袖に……」
血が滲んでるよ。
最後まで言い切れなかったのは、クロが咄嗟に左手を隠したからだった。そこでやっと――本当は薄々、感付いていた。
たびたび見え隠れする首の側面や手首の切り傷が、怪我ではないということに。



