Hamal -夜明け前のゆくえ-



「気付かれたくねえなら裸足で歩きやがれ」

「教訓、教訓。やっ! パーカーちゃん! 今日も元気にフード被ってますねえ」


部屋の中に入ってきたクロはひらひらと手を振ってくる。僕は軽く頭を下げる。


「なんか用か」

「うーん。この前パーカーちゃんが来たよーって教えてあげようと思ったんだけど、もう会えたんだね」


クロは軽快な動作で祠稀の隣に腰掛ける。


その反動で少しだけ上下に揺れた祠稀が顔をしかめたのを、見逃さなかった。


「なら、用が済んだな。帰れ。うぜえから俺の周りをうろちょろすんな」

「名前を盗られて怒ってるの?」

「その口閉じねえと放り出すぞ」

「怖いこわーい。ほんのジョークなのに。ねえ? パーカーちゃん」

「え、」


うろたえると、クロに次いで祠稀も視線を投げかけてくる。


ねえ?とか求められても、ジョークなのか知らないし……。


すると祠稀は心底面倒そうに溜め息をついた。


「元々、俺がクロって呼ばれてたんだよ。一時のことだけど。名乗らねえから周りが勝手に付けただけで、名乗るようになったらいつの間にかこいつがクロになってた」

「しぃ君、実は黒髪じゃないもんね。あたしも黒髪じゃないけどーっ」

「意味わかんねえから黙れっつーか早く出てけ」



……元々は祠稀がクロって呼ばれてた?