「今日は弁当屋のステーキ丼って決めてんだよ。お前は1番安いのり弁か、からあげ弁当の二択しかねえから」
再び歩き出した祠稀に腰を上げる。
どきん、どきん、と正直な心臓はその拍動を速め、脚を前に出させようとする。
ついてこいってこと? ……いいの?
聞くことはしなかった。僕が、ついていきたかった。一緒にいたかった。
「っ祠稀!」
「あん?」
「の、飲み物くらいなら買えるっ」
パーカーのポケットに入っていた小銭を取り出して見せる。
祠稀はわずかに目を見張ったあと、「上等」と、その端正な顔に微笑みを湛えた。
弁当と飲み物を買い終え、祠稀が向かったのは『家』と言っていた廃墟ビルだった。
明かりひとつないのに迷うことなく階段を上る祠稀は「転ぶなよ」と一度声をかけてくれただけで、僕が疲労困憊で部屋に入ったときには悠々とソファーに凭れていた。
相変わらず仄暗い部屋の中に、小さなダウンライトが寂しげに存在している。
「……ここって、電気通ってるの?」
「電気だけな。裏の中華屋から引いてるっぽい。っても、照明つくのはこの部屋だけ。いいから飲み物よこせ」
言われた通りペットボトルを手渡しテーブルの前に腰掛けると、祠稀はからあげ弁当を僕の前に置いてくれる。
「いただきます……」
と言わずに食べ始めた祠稀を盗み見てから、箸を進めた。



