「だからカモッてくださいって空気が満々なんだっつーの」
歓楽街にほど近い公園のベンチでうずくまっていた僕は、ばねが弾かれたように振り返る。
「やっぱお前か。フード被っててもすぐわかるぞ。そのジメジメした空気どうにかなんねえのか」
祠稀、だ……。
「なんっかこのへんにキノコ生えてんだよな、お前」
煙草を持った手で僕の頭上に円を描いた祠稀は、その手を口元に持っていく。
そこで祠稀の手と口の端に怪我のような痕が残っていることに気付いた。
「なにしてんの、こんなとこで」
「えっ……と、時間、潰してる」
「ただの暇人かよ」
チッ、と舌打ちまでした祠稀のほうこそ、なにをしているんだろうか。
会いたいと、ひと言でもいいから話したいと思っていたのに、神出鬼没な祠稀を前にして、思考能力は確実に鈍っていた。
僕はベンチに腰掛けたまま、ひたすら祠稀を見上げ続ける。
やっぱり怪我してる。クロの言ってた通りだ。
戻ってくる日まで、どんぴしゃ……。
「いや、そんな熱い視線を向けられても。やれるもんはなにもねえぞ」
「あ、ごめん……なさい」
「……」
「……」
「なんだようぜえな! 俺はてめえのエサ係じゃねえっての!」
急に歩き出した祠稀に、「え?」という言葉は届いていた。



