Hamal -夜明け前のゆくえ-



「……、あなたは、誰?」

「あたし? あたしはねえ、『クロ』とか『ユウ』とか呼ばれてる。あ、黒猫のクロと、自由のユウね? 好きに呼んでいいよお」


そう八重歯を見せながら笑う彼女は、ぼすっと音を立ててソファーに腰掛ける。


本名は? そう聞きかけて、やめた。



「そっかあ、きみはしぃ君の知り合いか。ここでしぃ君以外の子と会ったの、はじめて」

「ク、クロは、祠稀の友達?」

「あたし? あたしは、うーん。しぃ君の生態調査してるだけ? 好きで追い回してるだけなの。へへっ」


それってつまりストーカー的な意味じゃ……。


「あー。今、失礼なこと思ったでしょ。まあ、いっつも『うぜえ』って言われるからあながち間違ってないかもー」


けらけらと笑うクロはやっぱり、掴みどころがない。周りの目など何ひとつ気にしなさそうな人だ。


「ね。いつからしぃ君と知り合いなの?」

「えっ……と、5日前くらい」

「あらら。そんな最近なのかー。あたしが知らないわけだ」

「……祠稀のこと、詳しいの?」

「んー。知ってることは少ないよ。昔からこの街にいるみたいだけど、出入りしてる理由もよくわかんないし、友達がいるわけでもなさそうだし。髪の毛は伸ばしてる最中って言ってたなあ」


両脚をぶらぶらと揺らすクロは、指折り数えて話してくれる。