Hamal -夜明け前のゆくえ-



「うわあっ!」


神経を尖らせていると、ドアからひょこりと顔を覗かせた女の子が声高に笑う。


「あははっ! いいねえ、その反応! 新鮮、新鮮」

「っ、な、だ、」


誰! 驚きと焦りのあまり、うまく声が出ない。



綱渡りをするように歩み寄ってきたのは見知らぬ女の子だった。


彼女は僕の目の前で立ち止まると、なぜか一度くるりと回ってから、ずいっと顔を近付けてくる。


思わず仰け反った僕を気にする素振りも見せない。それどころか左右に揺れ動き、僕の顔や体をものめずらしそうに眺めてくる。


「ふんふん。見ない顔だね。思考は正常。心中は穏やか、ではないかな。その様子だと迷子でもないね」


ほぼ同じ目線の彼女はそんなことを言って、小首を傾げる。


「きみは誰?」


白金の長い巻き髪。書き足された眉毛の下には、黒くボリュームのあるまつ毛と外国人みたいなヘーゼルの瞳。


ここまで髪を脱色しているのはめずらしいが、歓楽街ではよく見掛ける系統の女の子だった。


警戒はしても見慣れているせいか、速まっていた鼓動は落ち着いてきていた。


「しぃ君の友達?」

「え……」


それってまさか、祠稀のこと?


「んー。なるほど、なるほど。友達ってほどではないけど、知ってはいるんだね。このへんに書いてあるよ」


僕の顔を指差しながらくるくると人差し指を回す彼女をなんとなく、身軽な人だと思った。