細い道が幾重にも入り組む歓楽街の奥深く。
仮に煌びやかで賑やかな場所を表側とするなら、ここは裏側と言ったほうがいいのかもしれない。
この前通ったときは早朝だったから、どこも店仕舞いをしたんだろうと思っていたけど……。
過疎化どころか廃墟と化してるんじゃないのか、ここ。
無事にたどり着けたビルを見上げ、人ひとりいない辺りを見渡す。
ここに来るまで誰ともすれ違わなかったわけでも、開いてる店が一軒もなかったわけでもないけど、表側と比べるとずいぶん廃れている。
夜を迎えればどんな場所になるかも想像できた。
本当に、祠稀って一体……。
辺りに誰もいないことを再び確認してから、煤けたビルの裏口から中へ入った。
エレベーターが存在しないのは以前確認済みだった。
わかっていても、薄暗く、埃っぽい空気の中で階段を上るのはやけに気力が削がれる。
もとより有り余るほどの体力など持っていない自分は、3階に着いたところで息があがっていた。
確か、この階だったはず。
いくつか点在するドアを確認しながら、目指したのは階段からもっとも遠いところにあるドアだった。
わずかに開きっぱなしになっているそれは、自分が閉めたあとも人が出入りした証拠になる。