――あれだ。
たとえるなら、まだ星が見えて、暗さが残る空。黒と紫と青のグラデーション。
空はどこか濁った色なのに空気は澄んでいて、呑み込んだ息を吐き出したくなる、そんな時間。静寂と喧騒の狭間。
祠稀がまとう雰囲気は、夜明け前のそれと似ている。
ひらけた視界の中でどうしてだろう、ひとつ、ふたつと見覚えのない物をぼんやりと数える自分がいた。
顔を横に向けたらずくん、と腹部に鈍痛が襲ったことでやっと我に返る。
どこだ、ここ……!
上半身を起き上がらせると、どうやらソファーに横たわっていたらしい。ずいぶん古びたソファーだが、自分のくたびれた服装と大差ないと思った。
「やっと起きたか」
声のするほうを見遣る。
照明と呼べるものが小さなダウンライトのみの部屋では、人の顔を容易に判別できない。けれど届いた声は祠稀のものであると、頭では認識していた。
なんだろう、ここ。部屋というには広すぎる気がする。
教室ふたつ分の広さはあるんじゃないか……。
それ以上に部屋と呼べるほど物が置かれていない。