――傷が、残るらしい。


1時間もいなかったであろうアパートを後にしても、脳裏にはびこっていたのは診断結果。


残るということは、文字通り消えないということだと頭ではわかっているのに、否定が、拒絶が、止まらない。



どうしよう。

残っちゃ、だめなのに。消えないなんて、そんなの――…。


「おい」


ぐらりと回しかけた目を上げると1メートル以上先で祠稀がこちらを見ていた。


「俺、飯食いに行くけど。お前は?」

「……、」


動転したままの気持ちが、目を泳がせた。


「腹減った?」


それでもなお耳に入ってくる祠稀の声は飄々としていて、自分の唇は動かさなきゃと思うたび、堅く閉じられたまま。


「そこから動かねえってことは、家に帰んの?」


目線より低い位置にあった目を見開いてすぐ、かぶりを振った。


激しく左右に揺らした頭と疼く傷に、眉が寄る。


「じゃあなんか言えよ。お前が今思ってること、ひとつでいいから言ってみろ。なんかあんだろ」


ぎゅ、と体の横で握り締めた拳。その中で容赦なく皮膚にめり込む爪。


痛い。体のどこもかしこも痛くて、痛みに差があって、もうどこが1番痛むのか、知りたくもない。