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「闇夜の威光って知ってる?」
「便利屋だって聞いたけど」
「架空のグループでしょ?」
「あの街じゃ禁止用語らしい」
「2年前くらいに消えたんじゃなかったの?」
仄暗い街にはびこるのは
好奇心と無関心と裏表。
揉まれて廃れて残るのは
嘘か、真か。闇か、光か。
「生き残りが復活させたんだと」
真相はいつも、
疑心と噂の中に潜んでいる。
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Episode0´
≫ZENNYA
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3月も半ばを過ぎた頃。学生の多くは春休みに入っており、年末年始ほどではないが2月よりも歓楽街は賑わっているように見える。
ていうか、増えるよね。浮かれた輩が。
視界の端で、酔っ払いの大学生たちが明らかに15、16歳の女子ふたり組をしつこくナンパしている。
「威光復活説、だいぶ拡がってきたな」
「ちょっとナツ。不用意な発言しないで」
ナンパ男たちの顔をいつでも再生できるよう頭のメモリーに登録していた僕は、隣を歩くナツを睨み上げる。
「そういう話は帰ってからにしてよ」
「もうほとんど人いねーじゃん」
「まだ残ってる人たちが威光の噂してたんじゃん。遊びに来てる人と入り浸ってる人の判別はできるようにしろって祠稀に怒られたばっかでしょ」
ナツは色んなバイトをした経験と人脈を使った情報収集がメインなんだから、もっとしっかりしてくれないと。
「俺そんなにできてないかぁ?」
「いつまで経っても微妙。祠稀に迷惑掛けるのだけはやめてよね」
「はいはい……チカはほんっと祠稀が好きだな」
「嫌いになるほうが難しいよ」
何気なしに夜空を仰ぐと、出会ったときと同じようにナツも倣った。
「まあ、俺は今日も、リーダーのために頑張りましたよ」
ふはっと思わず笑ってしまった。
「それ、祠稀に言ったら絶対変な顔されるよ」
「俺らのリーダーはなんであんなに天の邪鬼かね。常に喧嘩上等、自信満々、無鉄砲の人が照れる意味」
「慣れないんだよ。好かれたり、尽くされたり」
瞬く星から足元に視線を落とし、再び歩き始める。
「祠稀はひとりじゃないけど、いつもどこかひとりで。大勢の輪にいるのは苦手そうだもん」
「ふーん? 俺には難解な話だな」
「だから祠稀は、ナツをそばに置くんでしょ」
「それはさすがにわかるぞ。俺は鈍くてそこがいいってことか?」
「あはっ! うん、そう。ナツの長所」
「なんっか釈然としねえ……!」
半歩後ろで騒ぐナツにまた笑ってしまう。納得いかなくても、きっとナツは深く考えたりしないと思うから。
ナツと違って僕の頭の中は祠稀と、祠稀に関係することでいっぱいだ。
好意や信頼を寄せられるのは嬉しい。
けれど過度な期待や忠誠心はたぶん、祠稀にとって重荷で、枷になる。
なんとなくそう感じるようになったのは、ふたりきりから始まった威光にナツが加入して暫く経ったとき。
バランスがいいなと思った。
日々の会話やそれぞれの役割も含めて、個々が抱える闇の密度というか、自分の秘密に対する感じ方が。
たとえば丸い円に色を塗ったら。
僕は近くに光源があるとして、白から黒のグラデーション。
祠稀は真ん中に見えない線があって、左右できっちり白黒に分かれてる。ナツはまだらかなって思うけど、グレー一色な気がする。
そりが合わなくて喧嘩することもあるけど、不思議と僕は心底嫌になることはなくて。居心地がいいとさえ感じる自分に、ひとりで照れていたりもする。
それは僕の、くすぐったい秘密。



