歓楽街に着いたころには、辺りはすっかり暗くなっていた。
ただ今日の僕は足取りを誤ったようで、暴行の締めに居合わせてしまった。
まだ人通りが多くない風俗店が密集する場所には数人の見物人がいて、
「めんどくせえことしてくれやがって」
「二度と顔見せんじゃねーぞ」
と、3人の黒服が唾でも吐きそうな剣幕で立ち去っていく。
たまにいるんだよなあ……本当にゴミ捨て場で殴り倒されたり、泥酔して捨て置かれた人。今日は前者だった。
止めていた足を動かし、丸々と太ったゴミ袋にもたれる男の子の前で立ち止まる。
高校1年の男子、って感じだろうか。
「痛そうだね」
乱れた茶髪の下に隠れていた痣だらけの顔が、鬱陶しげに僕を見上げた。が、僕の姿を見るなり少し驚いたようだった。
「……生きてるだけ儲けもんだ」
「それは一理あると思う。……なにしてそんなことになったの?」
「別にめずらしい光景だったわけでもねえだろ。興味本位が1番うぜえよ」
背を起こした彼は髪の乱れを直しながら言う。
「高給で雇ってくれるっつーから働きに来てたのに、雀の涙みたいな給料で。きたねー仕事やって、自分で引き込んだ客と女のひでえ泣きづら見て1日が終わるって、嫌にもなるだろ」
「……お金が欲しいの?」
「金さえありゃ生きてはいけるからな。……まあ出来心で売上ちょろまかしたのはしくじったけど」
はっと嘲笑する彼を案外よくしゃべる人だなと思った。
後悔してるのかな。
パーカーのポケットに手を突っ込み、ただただその場に突っ立ったままでいれば、
「どうすっかなあ……」
と彼はこぼした。



