Hamal -夜明け前のゆくえ-



祠稀がやっと『シキ』になってくれたせいもある。


伸ばしっぱなしだった髪は見る影もない。


鎖骨近くまで伸びた長髪にはレイヤーが入り、きれいに整えられ、今日なんてひとつに括っている。まだ伸ばす気らしい。


それに、口の端にあったフープピアスは耳のピアスとチェーンで繋がれるようになった。


初めて見たときは一時的なものかと思ったが、2週間経ってもずっとしているから、常時装着するのは請け合いだ。


祠稀の趣味は僕と違うけれど、ちょっと、黒いマニュキアは真似してみようかなと思っている。



今はそれよりも、これから先僕らはどこで寝泊まりするかのほうが問題なのだが。


「じっとしてるほうが寒い。僕らの家探しに行こうよ。死活問題だよ」

「死活ねえ……」


ブーツの底で煙草をもみ消した祠稀は腰を上げ、僕を見遣った。


「誰かさんみたいにぴーぴー泣いてるような奴のためには、雨風くらいは凌いでやらねえとなあ?」

「は!? 僕泣いてなんかなかったじゃん!」

「誰もチカのことだとは言ってませんー」


行くぞ、と歩き出した祠稀を不可解に思いながらも追いかけた。



祠稀って本当になにを考えているのかよくわからない。


正直だし、演じているとはまた違うけれど、歯に衣着せぬ物言いを隠れ蓑にして、胸奥には重厚な扉を立てているみたいだ。


僕がいくら頭をしぼっても、鍵の在りかは見つけられなさそうなほどに。


「別にいいんだけどさあ……」

「あ? なんか言ったか?」

「祠稀って学校でもそんな感じなの?」

「なんだそのくだらねえ質問。俺はどこ行っても俺のままに決まってんだろ」

「だよね」


そうで在ってほしい。


強くて、優しくて、厳しくて、誰より奔放な祠稀でいてほしい。


僕より何倍も何十倍も幸せでいてほしい。


だからまだ気持ちは隠したままでいいから、言葉だけは閉ざさずにいて。