可愛げがないって祠稀のことを差すんだと思う。別にいいけどさ。これでも結構勇気を出したのに――…。


「俺は優しくねえからな」


口を尖らせ拗ねていた僕はその理由も置き去りにし、まじまじと祠稀の横顔を見つめた。


「見惚れてんじゃねえよ、右腕」

「……、」


ぶはっと思わず吹き出してしまった。

睨まれたけど、それさえも祠稀の照れ隠しなのかと思えばなんてことなかった。


「僕、臆病だけどそれでもいい?」

「はあ? 臆病だってことは、それだけ用心深いってことじゃねえの? もういっそ長所にしろよ。俺は後先考えずだから、突っ走って痛い目見ても学習しねえし。俺の欠点をお前が補ってくれるなら一石二鳥」

「んー……祠稀が武道派だとしたら、僕は頭脳派ってこと?」

「いや調子乗んな。お前はまだまだ鍛えっから。あと、あんまりうじうじしてっと短気な俺はキレるから」


いちいち怖いな。でも、楽しい。


「ねえ、なんか入隊?の言葉はないの?」


くつくつと笑いながら問えば、祠稀は弄んでいたジッポのリッドをバチンと閉じる。


「チカ」


二度目とは思えないほど、イチカと初めて呼んだときよりずっと呼び慣れているように感じた。


そして流れるように微笑んで、僕の心を引き寄せる。


「ようこそ。闇夜の威光へ」