Hamal -夜明け前のゆくえ-



人それぞれの個性や言動はある意味、未知の領域への招待状のようなものであって。


それを受け入れるか受け入れないかで世界の見え方も、温度も変わっていくんだろう。


誰にも言えない秘め事や知ってほしい想いが交錯し充満する世界では、ときに溜め息や涙さえ無意味で、空しさを覚えることもある。


それでも僕が生きるごく小さな世界の端で幸せを感じられる瞬間は、確かにある。


それは、愛というものを与えあっているからなんだろうって、信じていたい。


心に決めた覚悟。胸に秘めた決意。


それらも愛というものに繋がるのなら、僕はこれを手放さない。


祠稀の孤独を掬い取ることはできなくとも、祠稀に幸せを感じてもらえる瞬間を作れる人になりたいから。



「……なんだよ」


わざわざ前を通り祠稀の右側に座ったからか、じっと見つめていたからか、居心地が悪そうに問われた。


「祠稀の右腕って言われるためにはまず、右側にいることを心がけようかなと思って。形から入ってみた」

「……」

「……」

「お前すげえな」

「なにが?」

「よくそんな恥ずかしいことが言えるな」

「はっ!? し、祠稀にだけは言われたくないんだけど!」

「俺は正直なだけですー。お前は、かっこつけてるだけだろ」


沈黙のあと、じわじわと顔を赤くする僕の羞恥心が交じった怒気を、祠稀はふんと薄笑いで一蹴する。