Hamal -夜明け前のゆくえ-



「俺が知らない2割のことは、ヒカリたちがどんな風に警告してたかってこと。一度のチャンスを与えたあと、どれくらいの期間見守っていたかってこと」


ああ……だからあの日の祠稀は、『あんなやり方でよかったのか』って深く迷っているように見えたのか。


「自分のときなんて気付きもしなかった。ヒカリはいつ、なにを思って親父に警告しに行ったのか。今でも知らねえ。……反吐が出る」


自分に対して言っているなら、悲しく思う。


そう言うしかないほどヒカリさんを慕い、威光を崩壊させたのは自分だと言う祠稀に、僕ができることはきっと限られている。


ひねくれ者の祠稀が過去と一緒に沈めた孤独を掬い取ることは、僕にはできないだろう。


祠稀は優しいよ。厳しいときもあるけど、僕は助けられたよ。そう言うことはできる。


でも祠稀に必要なのは、一瞬だけ慰めになるような言葉じゃなくて、継続する、存在する、僕にとっての祠稀じゃないかと思う。


僕がどんな人間であれば、祠稀は幸せを感じてくれる?


優しいだけが人間として正しいわけではないだろう。


斜に構えるだけの人もけっして楽ではないだろう。


そう思う僕自身も、どんな人間が正しく、どんな人なら誰にでも受け入れてもらえるのかはわからない。


人は複雑で、難しくて。どれだけ自分を持っていても、翻弄されたり流されたりすることもあるんだろうなってことしか今は理解できない。