「ねえ祠稀……。僕が祠稀に抱いてる気持ちはきっと、祠稀が自分を救ってくれた人に抱いていた気持ちと同じだと思う」
この言い方はずるいかな。一緒にするなって怒るかな。
一掬の不安は、おもむろに見上げてきた祠稀の瞳があまりに寂しげになったせいで飛散してしまった。
「ごめん……その人のこと、なにも知らないのに」
「はっ、別に謝るとこじゃねえだろ。わかりやすかったし、ちょっと笑えたし」
……笑えてなんかいなかったよ。
祠稀と自分は同じだと言った僕は、祠稀を救った人のことなんて知らないのに。
僕を見上げた祠稀は当時の自分と僕を重ねて、その人の面影を探してしまったのかもしれない。
見つかるわけがなかったのか、思い出してしまったのか。
どちらにしても愁然とした眼差しの底に、掬い取れない孤独が沈んでいったように思えてならなかった。
「――ヒカリ、っていう奴だった」
「……」
「俺をあの街から連れ出してくれたのは、ヒカリ。威光のリーダーだった。……おちゃらけてて、アホ丸出しで、全くリーダーっぽくはなかったけど」
ひらりひらりと椛が落ちる速度で、祠稀は話してくれた。
去年の春、ヒカリさんに出会い、威光の存在を知ったこと。
このビルが威光の隠れ家で、毎日違う顔ぶれが20人ほど集まり、入れ替わり立ち替わりで寝泊まりしていたこと。
くだらない話ばかりしている日もあれば、護身術を習う日もあって。
あとは次に警告する人や店を決め、方法や順序やメンバーを話し合っていたこと。



