「……可愛い顔してるのね」
鈴というらしい女性にまじまじと見つめられ、恐る恐る取ったフードを被り直したくなる。
わずかに俯いた些細な抵抗は、前髪を留められたヘアピンの前では脆くも崩れ去った。
「お肌も荒れてないし、若いっていいなあーっ」
25歳くらいに見えるけど、元外科医ということはもう少し歳を重ねているのかもしれない。
祠稀とは、どういう関係なんだろう。
「消毒するね」
目の前に座り救急箱を漁っていた彼女は言葉通り、湿り気を帯びた脱脂綿で額を拭ってきた。
ひやりとした温度と柔らかな感触。それらが、固まってこびりついた血を取り除いていくのがわかる。
「しみるかもしれないけど、痛かったら言ってね」
ひと呼吸置いたあと傷口に押し当てられた脱脂綿は鈍痛を呼び起こし、反射的に眉を寄せさせた。
「ごめんね、痛い?」
ぽん、ぽん、と遠慮がちに、だけど確かに手当てをしてくれる彼女に返す言葉が見つからない。



