Hamal -夜明け前のゆくえ-



丹さんは威光のリーダーと友人だったらしい。


メンバーではなくとも、中華飯店の店主や店員のように、影で威光を支えていたひとり。


つまり祠稀にとっては、当時の自分を知る人と久々に会えたということだった。


「丹さん、本当にクロと面識ないんだよね?」

「心配性だなー。本当にないって。俺見ての通り引きこもりだし、口コミでしか仕事受けてないから、向こうが勝手に知ってたんだろ。俺もクロって名前だけなら知ってるしね」

「そうだとしても、やっぱりクロって抜け目ない……あなどれない」

「アハハハハッ! アナドレナイ! 13歳が言う言葉じゃないねっ」

「僕これでも真剣に悩んでるんだよ」

「君らのちんけな情報を売るより、人ひとり診たほうが儲かっちゃう俺でごめんね」

「うわ……説得力ある……」


だろ?と笑う丹さん。


彼と祠稀を会わせて、クロはどうしたかったんだろう。


本当にたまたまかもしれないけれど、威光について調べていたクロなら、丹さんにたどり着くのも容易そうだ。


溜め息をつくと、丹さんは煙草に火を点けた。


「なんか急に吸いすぎじゃない?」

「赤マルじゃ効果薄いよな、って気持ちがあるだけ許せ」


効果? 疑問に思ってすぐ脳裏に浮かんだのは、灰皿に立て掛けられたまま、紫煙をたなびかせるだけだった煙草。無気力にソファーへ寝転んでいた祠稀。


ピースがまたひとつ、ふたつ、はまっていく。