Hamal -夜明け前のゆくえ-



「聞いてんのかよ。起きたら体イテェはベッドは硬いは最悪な目覚めのあと、ヤブに治療された現実に俺がどれだけ肝を冷やしたか。一瞬マジで三途の川見えたじゃねえか!」

「祠稀……」

「おい無視か。上等だちょっと立て……っておいおいおい! なんっだよ!」


はらはらと涙をこぼすと祠稀は狼狽の色を出し、「はあ!?」とまで言う。


「し、祠稀、元気になった……?」

「いや明らかにお前よりは元気だろ……なに泣いてんだよ意味わかんねえ」

「よか……っ、」


うう、と。零れた涙に嗚咽を漏らせば、祠稀が後ずさったのがわかった。


「おいー。そこちゃんと慰めてやれよ。安心して泣いてくれる子なんて、そういねーんだから。まあ女の子がじゃないのがドンマイって感じだけどなーアハハハッ」

「うるっせえなや! 黙っとけ部外者!」

「あーあ。治療すんじゃなかったかな。その子が身売りする勢いでやって来たから、お兄さんちょっとキュンとしちゃったんだよね」

「いい歳したオッサンが気持ちわりぃんだよ! 大体テメェは人助けなんかする柄じゃねえ、っていい加減にしろチカ! どんだけ泣く気だ!」


鼻をぐずぐずさせながら涙をしきりに拭っていた僕は、顔を上げる。


眉根を寄せ、口を真一文字に結んだ祠稀は気恥ずかしそうに僕を見つめていた。