――ぼすっ、と。なにか柔らかいものが頭に当たった。


なにこれ……クッション?


「よりによってテメェかよ!」


掴んだクッションをぼうっと見ていた僕は一気に目覚め、俊敏にソファーから起き上がる。


うわ、まだ筋肉痛……!


動かした体のいたるところに走った痺れにびっくりしながらも、声のしたほうに目を向ける。


「お前ね、起きて早々人んち荒らすのやめようよ」

「クッソ……! 屈辱だマジで悪夢だなんだコレ!」

「元気だなー。お前もう今日中に退院してね」

「今すぐにでも退院してやるっつーの!」

「じゃあハイこれ。2泊入院した分と、治療代の領収書ね」

「ぼったくり過ぎだろ!!」


書き直せ!と領収書らしき紙を引き千切った祠稀が、いる。


服を纏わない上半身は包帯でぐるぐるに巻かれているし、いたるところにガーゼや傷跡が見受けられるものの、立ち上がり、腹の底から声を出し、怪我人とは思えないくらい元気な祠稀が、僕の視界の中にいる。


「お? 起きたか坊主。よかったな、うるせーほど元気だぞコイツ」


ダイニングテーブルに浅く腰かける丹(まこと)さんは首を伸ばし、煙草で祠稀を指した。すると見向いた祠稀が大股で近づいてくる。


「テメェ……!」


頭を鷲掴みにされた僕はわけがわからず、


「この俺をヤブ中のヤブ医者に診せるとはやってくれるじゃねえか、ああ!?」


と凄んでくる祠稀になされるがままで、弁解も謝罪もできなかった。