視線を戻すと母さんは取ってつけたような笑みを浮かべた。


「壱佳とご飯食べられるなら、お母さんなにも言わないわよ?」

「はは……なにそれ。変なの」

「変じゃないわよぉ」


口を尖らせる母さんにもう一度笑って、「宿題片付けてくるね」と自室に入った。


「変だよ……」


自嘲気味な笑みを浮かべたあと、着替えもせず机に向かった。



祠稀が“警告”をした日から2週間近くは経っただろうが、義父は暴力を振るう様子を見せない。


僕が頻繁に外出するようになったことを踏まえても、だ。


酒は変わらず飲んでいるから、暴言を吐かれたりはするけれど、手を出してはこない。酒の量も減らしているように思う。


そして次の日に謝られることは今も変わらないが、先ほどの母さん然り、気味が悪いほど機嫌をうかがわれるようになった。


いい両親を演じられている気持ちになる僕は、歪んでいるのかな。


以前よりずっとマシなのに、素直に受け入れられずにいる。


僕が望んでいたのはこんな日々だったろうかと疑問まで感じている。


いつまで続くんだろ。


一生……ってことは、ないだろうな……。


そのうちさらりと戻ってしまうんじゃないかって考えると怖くなったけれど、それに囚われ続けなくなったのは、進歩であることに違いなかった。