Hamal -夜明け前のゆくえ-



「あ、起こしちゃいました? おじゃましてまーす」


よく通る声と比例してにこりと笑う祠稀は、寝室から顔を出した母さんに向けて言っていた。


「俺うるさいんで、やっぱ帰ります。つーか朝まで遊んできたほうがいいっすね」


くるりと体の向きを変えた祠稀に、誰も反応できなかった。


僕は祠稀に引かれるがまま外に出て、数分前に上ったばかりの外階段を下りる。


やっと声が出たのは、アパートの敷地内を出て祠稀に手首を離されてからだった。


「どうして……」


それしかなかった。だって、本当に、意味がわからなくて。突然のことすぎて、今さら心臓がバクバクと脈打っている。


「警告だよ」

「……え?」


予想し得なかった返答に立ち止まる。


警告……って。


祠稀が義父に向けた言葉に、そんな類のものが含まれているような気はしていた。


だから驚いたし、見てることしかできなかった。でも……。


「どうして、そんなこと、」


くいっ、と。右の口角が引き攣り、空気を和ませようとした笑みは失敗に終わった。


僕を見つめる祠稀が別人みたいだ。


髪で顔が隠れていない祠稀なんて、見慣れていないから。


なにより涼しい艶のある双眸が、夜空で瞬く星のような輝きを走らせたからかもしれない。



「怖いか?」


そう聞いてきた祠稀はなんだかとても、はかなげだった。