「あークソ。雨うぜえ」
濡れた髪を両手で掻き上げた祠稀は、やっぱり美少年という言葉がぴったりだった。
同級生にも上級生にも、こんなに綺麗な男子はいない。
細めの筆で尻上がりに描かれたような眉毛に、どことなく鋭い切れ長の目を囲う睫毛も長い。
顔の中央にスッと通った鼻も、少し突き出た唇の紅葉のような赤みも、ひとつひとつを見ても綺麗だと思うけど、全体のバランスがいいんだろうな。
「おい帰んぞ。タオル貸せ」
「え、うん……」
歩き出した祠稀について行きながら、その手に持たれたビニール袋の存在に不安が胸をかすめる。
祠稀が一緒に来てくれるなら、大丈夫かもしれない。でも帰りたいと思えていないのも正直な気持ちだった。
玄関まであがってくれるかな……。それか、渡すものだけ渡して外に出たいな。
どう伝えようかと悩んだとき、祠稀が空き地の角を曲がった。
あれ……?
「僕が住んでる場所知ってるの?」
そういえば地元がここだなんて、話したこともないのに。
「あのアパートだろ」
祠稀が指差したのはここ一帯では古いほうに入るアパートで、もとは白い外壁も所々が黄色く変色している。



