Hamal -夜明け前のゆくえ-



「大丈夫だから。孤独はお前だけが感じてるもんじゃねえし、独りだから感じるんじゃねえから。人が溢れた世界で生きてるから感じるだけなんだよ」


雨がぱらつき始めても僕は、祠稀の胸に額をくっつけたまましゃくり上げる。


ぬくもりに涙が止まらなかった。


人のぬくもりをこんなにも愛おしく感じたことはなかった。


「……寂しいなら言え。負けそうなら呼べ。そしたら一緒にいてやるから、望むことを諦めんな」


ひと言ひと言が、傷だらけの心に染み込むようで。


祠稀も孤独を感じているのかと思うと、優しい人間になりたいと思った。


だから祠稀はこんなにも優しく、強いのだと思えた。


「生きていたいなら、不満よりも希望を語れ。そうやって前に進め。……できるよ、お前なら。俺が誰より近くで、見ててやるから」


僕の肩を抱き寄せていた手に、ぐっと握力が加わった。


その力強さはまるで『死ぬな』と言ってくれてるみたいだったけど、『近くにいろ』と震えているようにも感じた。



「……俺がこっち側に連れ出したんだ。その先に続くもんをお前が望むなら、俺は絶対、捨てたりしねえ」


そぼ降る雨音に交じって聞こえた祠稀の声音は、かすかに緊張をはらんでいたように思う。


涙を拭った僕は、物憂げな艶のある瞳を向けてくる祠稀を見つめた。


祠稀にとって僕は、必要なのかな。


だからこうして、会いに来てくれたのかもしれない。


わざわざ聞くことはなかったけれど、泣きじゃくったあとの僕は、ひとりじゃないことが堪らなく、照れくさかった。