Hamal -夜明け前のゆくえ-



そうしてようやく涙の熱と一緒に込み上げる、胸の内に堅く秘めていたもの。


ずっと、諦めきれずにいたもの。


「帰りたいと思える家が欲しかった……!」


祠稀は、夢物語だって言ったけど。


演技じゃなくて、無条件に愛されてみたかった。なんの曇りもなく、壱佳って呼んでほしかった。


「この2年間……ずっと、そう思ってたんだ……」


気付いてほしかった。

母さんに微笑みかけられるたび。名前を呼ばれるたび。なにか欲しいものはあるかって聞かれるたびに。



ねえ、母さん。


僕は、貧しくたっていいから、帰りたいと思える家が欲しい。


笑い合える家族が欲しい。


あの暗くて狭い箱の中に、生きるための光をとぼすことができたなら、僕は初めてあの空間を家と呼べた。


呼びたかったんだ。本当は、ずっと。


「だけどもうっ……無理なんだ……」


義父も母さんも化け物だと認めてしまったように。


期待したって僕の声は一生届かず、僕がふたりの輪に混ざることもないんだろうと実感してしまったから。


「怖い……いつか、耐えられなくなるかもって思うと、怖くて……っ」


死にたくない。


自分で死を選びたくない。


だけど揺るぎない自信なんて持ってなくて、怖いよ。



「独りはもう、いやだ……」


ぎゅっと、肩に回された祠稀の手に力が入ったのが伝わった。