Hamal -夜明け前のゆくえ-



「どうでもいいって思われない僕になるから……死にたいなんて言わない僕になるから……っ見捨てないで、祠稀。お願いだから、僕を、捨てないで」


はらはら落ちる涙が頬を伝う。


かっこ悪いよね。弱くて、情けないよね。


でも失いたくない。祠稀だけは、どんなことがあっても。



ずっと、ずっと、ひとりだった。


人の手の温かさも、一緒に食べるご飯の温かさも、隣で笑い合う温かさも、忘れていた。


祠稀と出会って思い出したんだ。


そこら中に散らばる、すぐに忘れてしまいそうな、小さな、小さな幸せを。



やっと見つけた。

繋ぎとめたいと思った。これから先も続くようにと願った。


なにもかもに満ち足りた幸せを感じたわけじゃないけど、ぽっと明かりが灯った場所にいられるぬくもりを、知ってしまったから。


偽物でいい。

嘘でいいかから。


消えないで。僕の光。


祠稀がいてくれるのなら、なんだってする。


だから許して。そばにいることを、許して。


「祠稀っ……お願い。……お願いだから、僕をっ、」

「捨てねえよ」


頭を抱き寄せられた僕は刹那、息を呑んだ。


後頭部に添えられたひとつの手の平だけが、ここにいていいんだよ、と言ってくれているみたいで。


香水に交じる煙草の臭いは決していい香りではなかったけど、安心できるもので。一気に涙が溢れた。