Hamal -夜明け前のゆくえ-



祠稀にとって僕は居ても居なくても同じなのに。


ムカついてるのと同じくらい鬱陶しく思ってるはずなのに。


どうして僕と向かい合って、目を合わせて、話すのをやめずにいてくれるの。



「お前はどうなりゃ満足なんだ。ろくに気持ち言わねえまま溜め込んで、その上俺と比べて、自分は弱いんですって自己完結するたびへこんで、なにがしてえんだよ」


ゆるゆると滲んできた涙が、まっすぐ見つめてくる祠稀の顔に霞をかける。


「慰めてほしいのか? お前の気持ち全部わかってくれる自分そっくりな奴が現れれば満足か? 無償で優しくしてくれるやつが隣にいてくれれば幸せか?」


眉を寄せても下唇を噛んでも溢れた涙を止める術にはならなかった。


「だったら余所を当たれ。もうあのビルにも来んな。俺はお前が望むほど優しくねーし、お前の気持ちなんか半分もわかってやれねえ」



気付けば僕は思い切り首を左右に振っていた。


嫌だった。

突き放されても一緒にいたいと思った。


僕が望むほど優しくされなくたって、僕の気持ちの半分もわかってもらえなくたって。


「……それでもいい」


今の僕は、祠稀に会えなくなることのほうがつらかった。


祠稀は僕みたいな人間は好きじゃないだろうけど。


うじうじして塞ぎ込んで、自分の気持ちばかり理解してほしい僕は、祠稀を苛立たせてしまうけど。


「見捨てないで……」


ぽつりとこぼした願いに、祠稀は目を見張った。