「いいから帰んだよ」
「な、にそれ……、っやだよ! 帰らないってばっ」
祠稀はがっちりと僕の腕を掴み、力ずくで前に進む。
なんで……帰りたくないって言ってるのに。
僕が義父になにをされてるか知ってるでしょ。
おつかいだなんて、そんな微笑ましいものじゃないって汲み取ってくれているんじゃないの。
それなのに、どうしてこんな無理やり帰らせようとするんだ。
「嫌なんだ……帰りたくないんだってば!」
今帰ったら最悪だ。釣り銭とレシートからして缶ビールの本数が合わない。それでなくとも殴られる可能性はいくらでもあるのに。
考えただけで肝が冷える。
「祠稀……っ」
どれだけ抵抗しても祠稀の力に敵わなければ、返ってくる言葉も表情もなかった。
なんで、なんでなの。
僕がこんなに嫌がってるのに、怖がってるのに、見向きもしてくれないなんてあんまりだ。
「僕は祠稀と違う!」
そう叫んでやっと、祠稀は歩みを止めてくれた。
「祠稀だったら帰れるだろうけど、僕には無理なんだ……っ祠稀みたいに強くないんだよ!」
弱いんだ、僕は。
祠稀と比べたら情けないほどに。
そういう人間だっているってこと、わかってはもらえないの?



