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居酒屋、風俗、クラブ。深夜や早朝まで営業している店が山ほどあるように、人もたくさんいた。
視界に入るのはほとんど大人ばかりで、深夜0時を回ってもこの街は騒がしく、煌びやかだった。
ぎゅ、と被っているフードの裾を思わず握ってしまい、その手をパーカーのポケットに突っ込む。
俯く自分の格好は見なくたってわかっていた。
くたびれた黒いパーカーにジーンズ。薄汚れたスニーカー。
おまけに丸まった背中と、顔を隠すフードは明らかに人目を避けようとしていて、自信や笑顔が満ちるこの街にはふさわしくない。
「……お前、俯きすぎ。逆に怪しいぞ」
こんな明るい道を迷わず歩けるほうがおかしい。
「……祠稀、は」
「はいストーップ!」
大袈裟に跳ねさせた両肩に、見知らぬ大きな手が乗っていた。
「あーあー。ダメだよ~、こんな時間に子供が出歩いちゃ」
き、た……。
「なにがあったかは知らないけどさぁ、こんな堂々と歩いてたら、危ない人に声かけられちゃうよ?」
ほら、だから、明るい道は嫌なんだ。
「って、俺も誰だよって感じだよね。でもお兄さん、怖い人じゃないから安心していーよ。君らみたいな子って他にも何人かいてさぁ、危なっかしくて見てらんないっていうか」
こんな経験は何度かあった。
だけど声も出なければ、顔も上げられず、動くこともできない。



