買ってしまった。
指定された通りのコンビニで、言われた通りに。
……なんで明らかに未成年の僕に酒を売っちゃうんだ。どうして身分証の確認すらしないんだ。
青白くて小さくて男らしくない顔や首元や手とか、背だって低いほうだし、ひょろりとした貧相な身なりから見て取れるものはあっただろう。
たぶん会計中の僕は目線を下げていたし、フードも被っていたから顔は見えなかっただろうし、ひと言も発さずにいたけど、でも……。
止まってしまった足が前に進もうとしない。
ビニール袋の紐が指に食い込む感覚だけが、自分で買い求めたこの重みの正体を追尋してくる。
僕は自ら、化け物をいっそう狂暴にさせるものを与える気か。
「ははっ……なに、僕、なにしてるんだろ」
正気じゃない。
冗談じゃない。
こんなもの絶対、与えてなんかやらない。
僕の手はアイツとは違うんだ……!
捨ててやると引っ掴んだ1本の缶ビールはまだ冷えていた。それさえも悔しくて、中身を先に捨ててやろうって思った。
プルトップを立ち上げればブシュッ――と空気が漏れ、途端に鼻腔を通ったビールの臭いに反応したのは記憶だった。
恐怖や絶望や痛みが染み込んだそれを思い出すたび僕は、泥水を飲ませ続けられたような気分になる。
「ヴ、エ……ッ!」
反射的に背を丸めた僕は嘔吐し、そばにあった電柱に手をついても立っていられなかった。



