――見ないで。


本心を話したつもりでも、祠稀の責めるような視線に、こんな自分を見られたくないと恥じてしまった。


恥ずかしいと感じる部分があるのなら、引き金になる要因もあるはずで。


けれどそれを直視する勇気はなく、気付けば僕は俯き、滲んだ涙をこらえていた。


「ごめん……祠稀」


思わず零したそれは、嫌われたくない一心からだった。


どうして突き放され、軽蔑さえ感じる瞳を向けられなきゃいけないんだって気持ちは変わらずあったけれど。


祠稀は“家族”という単語にさえ嫌悪感を抱くんだろうとも思っていた。


きっと僕の話は理解不能で、不快でしかなかっただろう。


「変な話して、ごめん。……忘れて」


返事はなかった。視線だけは感じていた。


数分動かずにいたけれど沈黙に耐えられず、「今日はもう帰る」と祠稀の顔も見ずに別れた。



……寒い。


外に出ると、来た時よりも静かな街が潤んでいた。


そぼ降る雨の音が妙に耳の奥でこだまする。


雨はあまり好きじゃない。


自分で傘を差さなければ雨を凌げないとわかっていても、誰かが一緒に差してくれた傘の中は、とても温かいだろうと思ってしまうから。