「『やめて』って言うことしか選べなかった僕は、聞き入れられなくても、そのあとなにをされても、自分が弱いせいだって思わなくちゃいけないの?」
勇気が簡単には芽生えなくなったように。
何度も踏みにじられるたび恐怖に呑まれてしまうように。
僕はこれからも、今のままじゃ強くなんてなれないの?
諦めきれないものを、手放すしかないの?
祠稀みたいに『日常だから』なんて言えるくらい、『やられっぱなしはご免だ』って言えるくらいにならなくちゃいけない?
「知るかよ」
長い、とても長い、苛立ちをひとつ残らず吐き出すような溜め息のあと、祠稀は言った。
「自分が弱いせいだってお前自身が思うなら、そうなんじゃねえの」
突き放された。
そうはっきりと感じた僕は、おもむろに立ち上がった祠稀を見上げることしかできなかった。
慰めてほしかったわけじゃない。ただ話を聞いてほしかった。
だけど返ってきた言葉に傷付く僕は、少しでいいから、沈んでしまった心を掬い上げてほしかったんだろう。
祠稀ならそうしてくれると、どこかで期待していたんだ。
「お前が父親に感謝すべきなんだろうって思うものと、父親がお前にふるう暴力が同等だと思うなら、そのままでいれば?」
思わないから、苦しいのに。
わずかに見向いた祠稀の瞳は冷たく、軽蔑さえ感じられた。
……どうしてそんな目を向けられなきゃいけないの。
どうして僕を、そんな目で見るの。



