冷笑した祠稀に胸の奥が捻じ切れるようだった。
夢物語だなんて言われたことを不快に感じたからなのかもしれないし、そんな風に言い切れるだけのことを祠稀は経験しているのかもって思ったせいかもしれない。
それ以外に僕は多少なりとも、傷付いていた。
「望んで……そう信じたいって思うことは、いけないの?」
世の中、仲のいい家族ばかりじゃないってことくらい、知ってるよ。知ってるけど。
「色んなところで仲良さげに、楽しそうに笑う親子を見掛けるたび、あれが家族なんだろうなって……いいなって思う僕は、そんなに変?」
僕は幻を羨んでるの? 祠稀の言う夢物語を、この目で、現実で見ているのは、僕だけ?
「そうは言ってねえ」
眉根を寄せていた祠稀は、僕と目を合わせるのをやめた。
「俺は、どれだけ嫌なことをされても受け身でいることを選んだなら、なにが起きたって誰のせいにもできねえだろって言ってんだ。我慢しようって、受け入れようって決めたのは、」
「――っ受け入れてなんかない!」
僕の声が打放しのコンクリート壁に反響したあとの静けさは、妙に居心地が悪かった。
我慢はしてる。耐えている。だけど、このままでいいとは思ってない。
もう母さんにも義父にも期待していなくたって、全てを諦めているわけじゃない。
弱々しくても『やめて』と口にするようになったくらいには、諦めきれないものだってあるんだ。
それでも僕は……。



