Hamal -夜明け前のゆくえ-



こんなんじゃ、ダメなのに……。


僕には外の世界があって、祠稀だっているのに。


まるで僕の世界はこの箱が全てのように、すぐ傷付いて、負の感情に絡め取られて、抜け出せなくなる。


これじゃあ祠稀の存在を自分で否定してるようなものじゃないか。不必要なんだって、無意味なんだって、言っているようなものだ。


救われたのに。そばに置いてくれたのに。会いたいって、楽しいって感じる時間はあったのに。


僕が弱いせいで、あるはずの救いさえ見失ってしまう。



――ぐ、と震える腕に力を入れて半身を起こす。


仰向いた先で、人の形をする化け物は腕を振りかぶっていた。少しだけ、笑っていた。


ああ……もう、いいや。


目がうつろになったとき頬骨か奥歯に激痛が走ったけれど、倒れ込んだ僕の意識は引き戻されなかった。


かすみ始めた視界の奥で、吹きつけた雨が窓の表面をするすると流れ落ちている。


……見失いたくない。置いていかれたくない。


本当にそうなってしまう前に、早く。早く外に出たい。


この箱よりずっと、ずっと遠くへ行きたい。


確かに願っているのに望む外の景色は雨でぼやけていて。


僕は浅く息を吸い込んで、そっとまぶたを閉じた。



いっそ真っ暗なほうが、希望なんて見い出さずに済む。