Hamal -夜明け前のゆくえ-



夕食前から酒をあおぐ義父と、それを知っていながら僕を引きとめた母さんの存在によって、芽生えた勇気が次々と削がれ、切り落とされていく。


だから休日は苦手だ。平日よりも苦痛だ。


やめて、と言えば口を塞がられるようになった。黙れ、といっそう強く殴られるようになった。


痛い。怖い。苦しい。……怖い。


「う……っ、ぐ」


時間差でやってきた吐き気を寸でのところで堪えるも、横たわる僕にかかる影が消えることはない。


「……吐くなよ?」


口を覆った指の隙間から洩れる息は弱く、ぬるい。喉の奥のほうがヒリヒリするのは、胃酸が込み上げたからだった。


「吐いたら許さないからな」

「……」

「聞いてるのか、壱佳」


頭を鷲掴みにされたことよりも、言葉ひとつひとつが突き刺すように痛くて、目を合わせることで答えることを拒んだ。


髪の毛を引っ張られテーブルの脚に頭を打ち付けられたら、それどころじゃなくなったのだけれど。


「やめ……っやめてよ、」


黙れの代わりに何度目かわからない平手打ちを食らう。


視界がどんどん狭まっていく感じがする。起き上がる力も入らない身体になっている気がする。


こんなんじゃダメなのに。

頭ではわかっているのに。


心がぎゅっと萎縮して、硬い硬いその奥からじゃ、勇気の芽を萌すことも困難になってしまう。


もう踏みにじられたくないと強く思いながら、容易に踏みにじられてしまう自分にも気付いている。