Hamal -夜明け前のゆくえ-





休日の昼過ぎは苦手だ。


3人がそろっても仲良く会話をするわけでもなく、よそよそしい雰囲気に車酔いのような気持ち悪さがはびこる。


今日は夕方になる前に出かけようかな。


遅めの昼食に使った食器やグラスを片づけながらそう思った。


居間からはいつものようにテレビ番組の音が聞こえてくる。片付け忘れたものはないか、ぐるりと辺りを見回してから居間に顔を出す。


「ちょっと……出掛けてくるね」


いってらっしゃい、と言われるかに思えた。けれど僕は立ち上がった母さんに右手を掴まれ、微笑まれる。


「最近出かけてばかりね、壱佳」


名前を呼ばれたことで、聞こえた声はテレビ番組のものではなかったと知る。


「せっかくの休日だもの、今日くらい一緒にいましょう? ね、壱佳」


ぬるりと耳に入ってきた母さんのお願いは、まさに毒そのもので。


鈍いしびれを足の裏に感じたときには、唇さえもうまく動かせなくなっていた。


「でも僕、今日は……用事が、あって」

「ね、お願い。壱佳」


ぎゅう、と僕の手を掴む力が強くなる。


どうして……。見えるようなところに怪我はしてないのに。


それとも僕が、外で誰かに言いふらしているんじゃないかって懸念してる?


「壱佳。今日だけでいいから……ね? 雨も降ってるし、一緒に家で過ごしましょう?」


……いやだ。


心とは裏腹に、手を振り払うことはできなかった。


母さんに引かれるがまま居間へ踏み込んでしまう僕が得られるものなど、たかが知れていたのに。