「利用できるもんは利用しねえと」
「……利用って」
「俺は見た目がいいらしいからな。一宿一飯の恩義じゃねえけど、生活だの飯だの世話してくれんなら、喜んで差し出すわ」
「……」
工面したいのなら、見た目を最大限使えるようにすればいいのに。
伸ばしている最中らしい髪は相変わらずで、祠稀の端正な顔をほとんど覆い隠してしまっている。
最近ではダテ眼鏡までかけ、フードを深く被る僕と並ぶといっそう怪しげになる。
「まあ俺にも好みはあるから選ぶけど」
ふっと思い付いたように笑う祠稀に少しだけ不安を感じた。
お金とかもらったりも、してるのかな。もらえるものはもらうという風な祠稀だから、ありえないことではないだろうけど。
僕らに声をかけてくる大人たちを毛嫌いしているのに、似たようなことをしてでもあのビルに帰りたくて、顔を隠してでもこの街に出入りしたいのかな。
祠稀は本当に、威光の――…。
どんっ、と肩に体当たりをされて眉を寄せる。
「行くぞ」
「……声だけかけてよ」
「ハイ練習1時間追加ー」
「え!? やだ、無理!」
歩き出した祠稀を追い掛けると、楽しげな笑顔が弾むように振り返った。
僕はいつものように不満をもらしながら祠稀の隣に並び、祠稀と同じものを見た。



