威光の話をクロに聞いてしまった僕は追跡装置を付けられている気分で、どこにいても不安に駆られた。
威光を恨んでいる人が僕の存在を知ったら、とか。
クロは僕の情報を売るんじゃないか、とか。
こんなことになったのは祠稀のせいだ、とか。
怯え、嘆き、責任を転嫁して。
自分の弱さに打ちひしがれる。
でも仕方がないんだ、と言い訳を繰り返す。
傷付けられたくない。痛めつけられたくない。命を脅かされたくない。
正直な気持ちを盾に恐怖から逃れても、日常へ帰った僕に戻ってきたのは、変わり映えのしない恐怖だけだった。
怪我をするたび家に閉じ込められる。体育の授業がある日は細心の注意を払う。
学校でも家でもビクビクする毎日に、落ち着く時間などなかった。
こんな生活をするくらいなら……。
そう思うたび別の恐怖が先頭に現れ、振り出しに戻る僕は恥ずかしいくらい、弱虫だった。
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「――壱佳!」
びくりと肩が震え、溜まりに溜まった宿題を消化していた最中だったことを思い出す。
暗い。あれ……今何時?
額を押さえて振り返ると、居間へ続く襖がぼんっと音を出して揺れた。