だから祠稀は『死ぬぞ』なんて大仰な言い方をしたんだろう。


クロの話を聞いた今となっては事実にほど近いとわかったけれど。


あんな言い方で気付けるわけないじゃないか。


それでも祠稀が投げかけてくる言葉の節々から。揺るがない祠稀の態度そのものから。


祠稀に会うためだけにこの街に来る僕は、この身が危険にさらされてもいいと思うだけの覚悟をしなくちゃいけなかったんだろう。


『強くなれよ』って笑った祠稀にはきっと、嘘なんかひとつもなかった。



「……なれないよ」


は、と自嘲気味の笑みが漏れる。


だって興味本位だったんだ。


威光がどんなグループかも、たったひとりの生き残りが祠稀だろうってことも、予想を越えていたんだ。


兆候はあった。警告だってされた。知りたいと思ったのだって事実だけど、覚悟があって聞いたわけじゃない。


僕はただ知ることで、近づけるんじゃないかって思っただけ。


本当に祠稀が生き残りなのか、思い違いなのか、そんなことはどっちでもよかったんだ。


誰に騙されたって利用されたって傷付けられたっていいなんて思っていたわけじゃない。


そんなのは嫌だ。
痛めつけられることはなにより嫌だ。


なら強くなればいい――と頭によぎる。


だけど、僕はただ祠稀に近づきたかっただけなのに……という気持ちが拭えるわけでもなかった。