あたしは、ふ、と笑った。

「…中学の時のこと、知ってるのあたしらだけだしね。それで、こないだ色葉とケンカしちゃった」

うまく伝わらないね、と言うと、佐伯くんは力なく笑う。


「…丸井さんは、全部お見通しってかんじだね。敵わない」


…こちらこそ。

佐伯くんにはほんと、敵わないなぁと思う。

あたしが言いたいこととかやりたいこと、色葉のためにしてあげたいこと、全部していっちゃう。

中学の時から、そうだ。

今回だって。あたしは色葉に言うのが精一杯だったのに、佐伯くんは本人に言ってしまった。


彼は色葉から目を離して、窓の外を見た。

昼の冬空は少しだけ、暗い。


「…純が、悪い奴だとは、思わないんだけどね」


周りの女子がね、と佐伯くんが困ったように呟く。

「女子?」

「うん。今日色葉が倒れた時、すぐに支えて運んで行ったの、純だったんだ。それで、周りの女子が色葉のこと、なにかしら言っててさ」

…なるほどね。