名乗ってから後悔した。

なんでもっとマシな名前を思いつかなかったんだろう。

「太郎?だっせー名前!」

「卓也、この人に失礼だろ!」

爆笑する卓也を見て、幼い心晴は彼の口を手でふさいだ。

過去の自分に庇われた心晴は、なんだか複雑だった。


「あっちでしよー!」

そして、幼い2人は心晴の手をぐいぐい引いて歩き出す。

サッカーをするなんて一言も言ってないのに、彼らの中ではすでに参加することになっているらしい。

(まあ、いいか)

体を動かせば気が晴れるかもしれない、と思い直し

心晴は わかったから引っ張るなよ と言ってついていった。








サッカーを始めて早1時間は経過していた。

すっかり子供2人と打ち解けた心晴は、サッカーを楽しんでいた。

相手が小学生ということもあり、手加減はしている。

「太郎ー!パス!」

年上を敬わず、呼び捨てにしているところを見ると子供らしいと思う。

無邪気に笑いながら自分にパスをまわしてくる卓也。

ボールを足で受け止めて、幼い心晴にパスをまわしたときだった。


「心晴君!」


突然名前を呼ばれて、驚いて振り向く。

そこには息を切らした未空が立っていた。

「え?心晴、あの人知り合い?」

卓也は幼い心晴を見て不思議そうに聞く。

しかし、未空の視線は心晴に向けられている。

卓也と幼い心晴は太郎、と名乗った少年と未空を交互に見比べて

不思議そうな顔をした。