「俺は峯岸心晴。」

「心晴君って、呼んでいいですか?」

「あ、うん。」


未だにぼんやりする頭をおさえて、頷くと未空は嬉しそうな顔をした。

どっちかって言えば彼女はあまり可愛くない部類に入ると思う(失礼。)

けれど、笑った顔は可愛い。

ほのぼのとした空気に包まれて、俺もつられて笑った。


「あ、思いだした!」

「え?」

「いや、未空が俺の夢の中に出てきた女の子に似てるって事思いだして。」

「私が夢に?」

「うん。」

頷けば、 変ですね と未空は言う。

確かに変だと思ったが、所詮夢だ。

俺は気にしない事にして、ベンチまで運んでくれて介抱してくれた彼女に

ありがとうと言うと気にしないでくださいと言った。

うん、未空は優しい。

良い子だなあ、と思う。


「俺、そろそろ帰るな!ホント、ありがとう。じゃあな!」

「はい、さようなら!」


俺が手を振れば、未空も手を振りかえしてくれた。

そのまま公園を出て、家まで走る。

さっき、変な夢を見たせいだろう。

胸騒ぎがする。早く、家族に会いたい。



自分の家の前に立ち、ドアノブに手をかけようとした時だった。

家の中から、笑い声が聞こえる。


「心晴!それ卑怯だろー!」

「お前が弱いだけだろ!っぷ、だせぇ!」


俺の声と、友達の声。

それに、この会話...聞き覚えがある。