その時突然ドアが開いて、俺はとっさに奏をカーテンとピアノの隙間に押し込んだ。

「!?ちょ…っ」

奏の声を遮るように胸の中に抱え込み、ベージュのカーテンに2人して包まる。



「あれ、北浜くんは?」

泉水先生の声だったことを認めて、自分の行動が間違いではなかったと確信する。

奇跡的に駒田は普通科の第三者が演奏中に入って来ることを許してくれたけれど、先生ならそうもいかないだろう。


「今、席を外してまして。ちょっと戻るまで時間がかかるかもしれません」

駒田の上手い対応にホッと小さく息をつく。


「さっきの演奏は君たちのものかな?」

「はい」

早く先生が去ってくれないかと、息をひそめて奏と2人祈る。


至近距離で肩に触れる吐息が妙に熱くてどきまぎした。

奏が奏じゃないみたいだった。