「アタシ、チューバってもっと地味な楽器だと思ってた!」
けらけらと頭の悪そうな笑い声を上げる奏にヒヤッとする。
地味、という言葉を駒田は不快に思わないだろうか。
駒田ほど自分の楽器に誇りを持っている奴なら、いや、そうでなくてもその言葉は侮辱と受け取られる可能性が高い。
「へへ、実は俺もそう思ってた」
だけど駒田はそんなことをまったく気にする様子もなく、奏と一緒にケタケタ笑っていた。
…なんだこの和やかな空気。
気を遣ったこっちがバカみたいじゃないか。
「俺の名前、伴鳴っていうんだけどさ。じいちゃんが付けてくれたんだ。いつも隣で誰かを助けて支えることができる、すごい演奏者になれって」
自分の名前をうれしそうに語る駒田が、俺には眩しすぎた。
俺はそんな意味のこもった名前を付けられたら、名前の重みに耐えられない。
きっと周囲の重圧に耐えかねてぐしゃりとつぶれてしまうのがオチだろう。
だけど駒田はそれに応えるだけの実力を持っている。


