演奏に集中していたせいでいつからいたのかはわからないけれど、誰かの気配を感じることはわかっていた。
駒田と俺が演奏している時に中に入って来る人なんて、こいつ以外にいないじゃないか。
「リーチもそういう演奏、できたんだね」
何だか拙い絵を褒められた子どものような気分で、うれしくも居心地が悪い。
熱くなる頬を隠しながら、
「うっせ…」
と答えるのが精一杯だった。
「そっちもすごかったねぇ」
奏がカーディガンの両ポケットに手を突っこんだまま、駒田の方に視線を向ける。
奏のことをまだ話していなかったと今さらになって思ったが、駒田は人懐っこい笑顔を奏に向けた。
いくら駒田でもこれだけ派手な見た目に引くかと思ったが、その様子にひとまず安心する。
昼休みにほとんど落ちていたメイクは、放課後の今ではバッチリいつものフルメイクに戻っていた。


