不安そうに俺を見る駒田の視線を感じ取りながらも、俺はそっちに目を向けることができない。

これ以上正面からまっすぐ何かを言われたら正気でいられる自信が無い。


「悪い駒田。今日の練習、やっぱり止めにしないか。一人で練習したいんだ」

「え、怒らせたならごめんね?ただ俺は…」

「お前もお前で練習しろよ。先生には俺から言っとくから」


何か言いかけた駒田の声を途中で遮り、俺は第2会議室を飛び出した。

心臓の動悸がやけに激しくて、鼻の奥がやけに痛くて、目の周りがどうしてか熱くて。


下を向きたくないから不自然なぐらいに背筋を伸ばして早足で歩いた。

何も考えないように、何も感じないように。


けれど第2会議室から離れても聞こえてくる力強いチューバの音色は容易く俺の心の芯を折り曲げる。

職員室まで耐えられそうになくて、俺は暑さのせいで人気のない中庭へと足を踏み入れた。