まだまだ敵わないなんて、本当にそう思っているのか。

音楽科のチューバ専攻生、いや音楽科の生徒の中では一番上手いんじゃないのか。


コンクールにたくさん出て名の知れている俺より、よっぽど。

なのにコンクールに出ないだなんて馬鹿げている。

「目立たなきゃどうしようもないだろ」


目立たなければ誰にも認めてもらえない。

誰かの前で演奏して、評価してもらって、初めて自分を認めてもらえるんだろう?


チューバの音が止まった静かな室内。
窓の外は、雨がぱらついていた。

「本気で、そう思うの?」


大型の金管楽器が詰め込まれた広い室内に、けれど駒田の声は落ちることなく大きく響いた。

当たり前だと言えなかったのはどうしてだろう。


「俺はチュービストになるつもりは無い。…演奏者じゃなくチューバの講師として、生きたいと思うよ」

――泉水先生みたいに。