奏が一歩歩くたび、周りを歩いていた生徒が奏を避けるように通る。

みんなの視線はその派手な頭一点に集中していて。


そのあまりの露骨さに、見ている方が耐えられなかった。

きっとあの中の誰かだってこうして遠くから見ていたら、耐えきれずに目を逸らすのだろう。


「北浜くん!おはよう!」

耳元で鼓膜を破る勢いで叫ばれた言葉に飛び上がると、申し訳なさそうに頭を下げる少年がいた。

「ごめんね、何回も呼んでるのに気付かないみたいだったから」

おはよう、と再び言われた声は柔らかく耳に届いた、けれど。


「え、と…」

誰だったか。
確か以前見たことのある顔のような気がするのだけど、名前が欠片も思い出せない。

そんな俺の様子を見兼ねてか、彼が困ったように笑う。

「駒田です。駒田伴鳴」

あぁそうだ、そんな名前だった。

心の中で手を打つと同時に罪悪感が込み上げてくる。