戸惑って何も言えずにいるうちに、学校が目の前という所までやって来た。

科の違う俺たちはここから別行動になる。


「あ…そ、奏」

「リーチ」

俺の声を遮って出てきた弱々しい声。

何だよ、さっきまであんなに強気だったくせに。


俺が悪いみたいじゃないか。
けしかけてきたのは奏なのに。

「あのさ、今日は放課後、練習する?」

「あぁ…多分、するよ」

昨日はいろいろ考えすぎたせいでちっとも練習できなかったから、今日こそは力を入れて練習しようと決めていた。

これから職員室に行って練習室の予約をしてくるつもりだ。


「じゃあ今日は遊びに行くね」

俺が止める間も無く、昨日までとは違う配色になった目立つ髪が、朝の喧騒の中に消えていった。